利益は1つじゃない?!株式投資で必須な3つの利益をわかりやすく解説
サムネテンプレ (1)
2026.1.18 シリーズ記事
サムネテンプレ (1)

任天堂の営業利益・経常利益・純利益を見てみよう!

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これまでのシリーズで営業利益・経常利益・純利益の違いと意味について学んできましたね。

ではいよいよ実践編です。今回は、今まで学んできた知識を使って、実際の企業の業績を読み解いていきましょう。

題材は、みなさんご存じ世界的企業である任天堂。

営業利益・経常利益・純利益をどのように読み取り、投資判断にどう活かせるかを実際の数字をもとに解説していきます。

読み終わる頃には、きっとあなたも「利益の数字から企業の経営状態を見抜く方法」が身につくはずです。

それでは、さっそく見ていきましょう。

1-1. 営業利益を見てみよう

まずは任天堂がどのくらい「本業」で稼いでいるかを表す営業利益を見ていきましょう。

営業利益の推移

任天堂の直近4年間の業績を整理した表は次のようになります。

利益関係性 (21)

上の表を確認すると、2022年から2025年までで592,760→504,375→528,941→282,553(百万円)と推移していることが読み取れます。

ぱっと見ただけでも、2025年に大きく落ち込んでいるのがわかります。

前期比ではなんと約46%の減少です。

では、なぜここまで利益が落ち込んでしまったのでしょうか?

景気の影響でしょうか? それとも、競合にシェアを奪われたのでしょうか?

実はその背景には、任天堂ならではの事情があります。

Switchシリーズは発売から8年目を迎え、多くのユーザーが次世代機「Switch 2」の登場を待つようになりました。つまり、買い控えによる販売減少が起きたのです。

さらに、2024年は「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」や映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の大ヒットがあり、大きく売上と営業利益を押し上げました。しかし、2025年にはそのブームがひと段落。

2025年はその反動で売上と営業利益がともに落ち込んだ結果になったと考えられます。

営業利益率の推移

では、次に営業利益率を見ていきましょう。営業利益率を計算することで、売上高の影響を受けないことから、企業間の比較を見るのによく使われます。

営業利益率は以下の式で表せます。

営業利益率=営業利益÷売上高×100

そこから、それぞれの年の営業利益率を計算した結果、以下のようなグラフを得ます。

Image

グラフから見ても分かるように、2025年は営業利益率が大きく下がっています。ここで、「売上が減ったから利益率も下がった」と思う人もいるかもしれません。しかし、実は営業利益率は単なる売上の減少だけでは下がらない指標なんです。

では、なぜ営業利益率が下がったのでしょうか?

その要因を任天堂の決算書有価証券報告書から探したところ、「ブームの終了」や「新製品開発」などの記述を見つけました。

2024年にヒットした商品はゲームソフトライセンス収益といった利益率が高い売上が多くを占めていました。しかし、2025年はそのブームが終わり、利益率が低いハード販売の割合が増えたため、営業利益率が下がったと考えられます。

また、新機種の開発などによる研究開発費人件費の増加が、利益を圧迫した要因と考えられます。

とはいえ、営業利益率は約24%と高い水準を維持しています。以下の一般的な評価から見ても、任天堂の収益力は非常に優れているといえます。

1-2. 経常利益を見てみよう

次に、経常利益を確認します。経常利益は「営業利益」に加え、為替や投資といった本業以外の収益・費用も反映された数字です。

営業利益と経常利益の比較

利益関係性 (19)

表を見ると、2022〜2025年のすべてで経常利益が営業利益を上回っており、任天堂が為替差益や投資収益といった営業外収益を安定的に得ていることがわかります。

特に2024年3月期は、営業利益との差が約1,500億円、営業利益比で28.7%に達しています。

この年は円安基調が続き、海外売上を円に換算した際に為替差益(約615億円)が発生したことが、経常利益を大きく押し上げたと考えられます。

一方、連結損益計算書(55ページ)を確認すると、2025年3月期には為替差益がなくなり、逆に為替差損が約79億円計上されています。この結果、営業外収益は9,000億円(前年より約600億円減)となっています。

この減少幅は、前年に為替の影響で約615億円の利益を計上していた反動によるものです。
2025年はその為替利益がなくなり、逆に損失に転じたことで、営業外の利益が減少したと考えられます。

ただし、依然として円安水準が続いているため、経常利益の減少を為替要因だけで説明することは難しいです。

実際、営業外収益は約900億円と2023年とほぼ同水準であり、営業利益の大幅な減少が経常利益を押し下げたと考えられます。

さらに、営業利益が小さい2025年では、同じ約900億円でも営業利益比で31.8%に達しており、むしろ円安が引き続き経常利益を下支えしていたことが分かります。

したがって、2025年の経常利益減少は、円安効果の鈍化に加え本業(営業利益)の落ち込みによる影響が重なった原因だったと考えるのが妥当です。

1-3. 純利益を見てみよう

次に、企業に最終的に残った利益である純利益を確認します。

純利益の推移

利益関係性 (18)

上の表を確認すると、2025年は前年よりも約43%減少しています。ただし、これは業績悪化というよりも、2024年のヒット作の反動とみるのが正確です。

では、なぜそう言えるのでしょうか。それは純利益率を求めることでわかります。

純利益率の算出

純利益率は売上高に対する純利益ですから、以下の式で求めることができます。

純利益率=純利益÷売上高×100

この式を用いて、それぞれの年の純利益率を計算をすると、以下のグラフのようになります。

Image

上のグラフから、2025年にやや下がったものの、純利益率は20%以上を維持しています。ただし、前年と比べると約5%の減少が見られます。

任天堂の決算書(86-87ページ)を見ると、営業利益が約52%減少しており、また為替差益から為替差損に転じたことで経常利益も大きく下がっています。

一方、法人税や特別損益の項目には大きな変化が見られないことから、純利益率の減少は主に本業の利益低下為替要因の影響によるものだといえます。

EPSの算出

最後に、投資家がよく見ている EPS(一株あたりの利益)を見てみましょう。EPSは次のように計算できます。

EPS=純利益÷発行済み株式総数

以下の表にEPSに必要な値をまとめました。

利益関係性 (17)

上の表から、EPSは368→333→377→214円と推移しています。発行済み株式数は4年間すべて同じなので、EPSの減少は純利益の減少です。

つまり、株価価値の低下ではなく、ヒット作の反動による一時的な減少であると考えられます。

今説明した純利益率やEPSのほかにも、純利益を使ってROAROE配当性向なども求めることができます。

ぜひ興味のある方はぜひチャレンジしてみてください。

1-4. まとめ

ここまで、任天堂の営業利益・経常利益・純利益を確認してきました。

  • 営業利益:2025年は前期比で約46%減少しましたが、これはヒット作や映画の反動、Switch買い控えなどによる一時的な落ち込みとも見れます。
    それでも営業利益率は24%を維持しており、依然として高水準の本業収益力を誇ります。
  • 経常利益:為替や投資収益の影響を受けやすいものの、2022〜2025年までは営業利益を上回っており、海外展開による安定した金融収益がプラスに働いていました。
    2025年では営業利益との差が減少していますが、営業利益比で見ると高く、為替の影響をプラスに受けていることが分かります。
  • 純利益:純利益率も20%以上を維持しており、依然として高い収益性を保っています。
    また、株数の大きな増減もなく、EPSは純利益の動きをそのまま反映しています。

これらを総合すると、任天堂は「高収益な本業」「安定した海外収益構造」「堅実な財務基盤」の三点から見て、優れた収益体質を持つ企業であるといえます。

以上、本記事では任天堂の実際の業績を使って3つの利益をどう投資に活用するかを解説しました。
今回の分析を参考に、ぜひ他の企業の利益指標も同じように計算してみてください。

数字を読み解く力が身につけば、投資判断の精度は格段に上がります。

次の記事では3つの利益を見る際に注意点についてまとめました。ぜひ読んでみてください。

理解度チェッククイズ

Q. 利益を見るときに最も大切な視点はどれでしょうか?

  • A. 数字の大きさそのものを比べて、どの企業が一番儲かっているかを見ること
  • B. 利益が前年より増えていれば良く、減っていれば悪いと判断すること
  • C. 「どの利益が、どんな要因で動いているか」を理解し、その背景を読み取ること
  • D. 営業利益だけを見れば、企業の全体像が把握できること

正解!

不正解...

正解はC. 「どの利益が、どんな要因で動いているか」を理解し、その背景を読み取ることです。

利益は単なる数字ではなく、企業がどこで稼ぎ、またどこで経営がうまくいっていないかを表すものです。営業利益・経常利益・純利益の流れを通して「変化の理由」を読み取ることが、投資判断で最も重要な視点です。

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