第2回:雇用統計とは(米国編)
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前回は、経済指標の基本と「予想 vs 結果」で株価が動く仕組みを解説しました。
今回からは、具体的な経済指標を一つずつ見ていきます。
第2回で取り上げるのは、米国雇用統計です。
「雇用統計ってよく聞くけど、何を見ればいいの?」「なんでアメリカの指標が日本でもニュースになるの?」と思っている方も多いのではないでしょうか。
雇用統計の基本を押さえておくと、毎月のニュースが理解できるようになり、世界経済の流れが掴めるようになります。
本記事では、米国雇用統計の基本から、注目すべき数字、そして株価への影響までを分かりやすく解説していきます。
米国雇用統計とは、アメリカの労働省が毎月発表する、雇用に関するデータをまとめた統計です。
発表のタイミングは、毎月第一金曜日(日本時間では金曜の夜〜土曜の早朝)と決まっています。
この統計では、「どれくらいの人が新しく雇用されたか」「失業率はどうなっているか」「賃金は上がっているか」といった情報が分かります。いわば、アメリカ経済の通信簿のようなものです。
では、なぜアメリカの雇用統計が日本でもニュースになるのでしょうか。
それは世界最大の経済大国であるアメリカの景気が、世界中の市場に影響するからです。
アメリカは世界GDPの約25%を占めており、アメリカ経済の調子は世界中の株式市場に波及します。
また、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は、雇用統計を金利の判断材料にしています。
金利の動きは株価だけでなく、為替や債券など幅広い市場に影響します。
そのため、世界中の投資家が雇用統計に注目しているのです。
雇用統計にはたくさんの項目がありますが、初心者がまず押さえておきたいのは以下の3つです。
① 非農業部門雇用者数(NFP)
最も注目されるのがこの数字です。
「非農業部門」とは、農業を除いた産業という意味で、製造業、サービス業、小売業など、私たちが普段イメージする仕事のほとんどが含まれます。
この数字は「前月と比べて何万人雇用が増えた(または減った)か」を表しています。プラスが大きいほど「企業が積極的に人を雇っている=景気が良い」と判断できます。
② 失業率
働きたいのに仕事がない人の割合を示します。
失業率が低いほど景気が良く、高いほど景気が厳しいと判断できます。
アメリカでは3〜4%台なら「健全な状態」と見なされることが多いです。
③ 平均時給(前年比)
労働者の賃金がどれくらい上がっているかを表します。
賃金が上がること自体は良いことですが、上がりすぎるとインフレ(物価上昇)につながるため、市場では警戒されることもあります。この点は次回の「CPI」の記事で詳しく説明します。
ここで、第1回で学んだ「予想 vs 結果」の考え方を思い出してください。
雇用統計でも、株価は予想と結果のギャップで動きます。
ただし、雇用統計の場合は少し複雑で、「景気」と「金利」の2つの面から株価に影響します。
例①:雇用者数が予想より大幅に増えた場合
景気が良い証拠なので、企業の業績も良くなりそうだと判断され、株高要因になります。
しかし同時に、景気が良すぎるとFRBが「過熱を抑えよう」、つまり物価が上がりすぎないようにブレーキをかけようと金利を上げる可能性があります。金利上昇は株にとってマイナスなので、株安要因にもなります。
この2つが綱引きをして、どちらが強いかで株価の方向が決まります。
例②:雇用者数が予想より少なかった場合
景気が弱い証拠なので、企業の業績も心配され、株安要因になります。
しかし同時に、FRBが「景気を支えよう」と金利を上げない、もしくは下げる可能性があります。これは株にとってプラスなので、株高要因にもなります。
このように、「良い結果なのに株安」「悪い結果なのに株高」という一見不思議な動きが起こることがあります。
最初は複雑に感じるかもしれませんが、「景気」と「金利」の両面から見る習慣をつけると、だんだん動きの理由が分かるようになります。
次回は、もう一つの重要指標であるCPI(消費者物価指数)について解説します。インフレとは何か、そしてなぜ株価に影響するのかを見ていきましょう。
Q.下の選択肢のうち、正しいものはどれ?
正解!
不正解...
正解はD.雇用統計はFRBの金融政策に影響を与えるため、世界中の投資家が注目している。です。
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米国雇用統計は毎月第一金曜日に発表されます。非農業部門雇用者数は、農業を除いた産業の雇用者数を表しています。また、雇用統計の結果が良くても、金利上昇懸念から株価が下がることもあります。FRBは雇用統計を政策判断の重要な材料にしているため、世界中の投資家が注目しています